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安全で高品質な農林水産物を安定的かつ経済的に生産し流通させること、その過程で環境保全を実現することは、広く一般市民が安心して健康的な生活をおくるための前提であり人類共通の願いです。また、このことは農林水産業が産業として持続的に発展するための条件でもあります。しかるに近年、無登録農薬問題、農薬残留問題、BSE問題、鳥インフルエンザ問題、各種化学物質による土壌・海洋汚染などの環境問題、農林水産物表示偽装問題などの多くの問題が発生し、農林水産物の安全性や農林水産業の環境保全機能に対する信頼が揺らぎ、大きな社会問題になっています。 |
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これらの問題の解決には、農薬、肥料、飼料、動物用医薬品などに代表される生産資材の適正な使用を推進することが重要です。これらの生産資材を使用することは、一定の品質の農林水産物を安定的に生産し流通させる上で欠くことができません。しかし、一方で生産資材が適正に使用されない場合には、種々の深刻な問題が生じることになります。何が「適正」かの判断には、法律、契約、農林水産技術、作業の安全性、食品の安全性、環境負荷、経営収支など次元の異なる多様な基準が関係します。
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これらの問題に対しては、産官学民の専門家はもとより多くの一般市民が強い関心をもち、それぞれの立場や視点から意見の表明や問題解決に向けた継続的な努力を行っています。こうした中にあって私たちは、農林水産科学技術と情報科学技術の融合を進め、農林水産業における生産、経営、流通を支援・誘導する21世紀に相応しい情報システムを構築・普及することが重要であると確信しています。特に、生産資材の適正使用を支援するナビゲーションシステムを構築し、消費者、生産者・農業協同組合等の生産団体、流通・加工業者、小売業者・生活協同組合などに広く普及させることが、多くの一般市民が関心を持っている安全で安心できる農産物の生産および流通を実現するための鍵であり、また、このことが環境保全型農林水産業を実現する上でも重要な役割を果たすと考えています。
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こうした考え方に立ち、私たちは2003年に任意団体を組織し、研究機関が実施する研究高度化事業「農薬適正使用ナビゲーションシステム(農薬ナビ)の開発」を支援しました。こうした研究成果の実用化を図るため、2005年には産官学民の機関と連携して農林水産省「ユビキタス食の安全・安心システム開発事業」に応募し、私たちの提案した「農薬ナビを活用した農薬使用リスク管理システムの開発実証」が採択されました。
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これらの事業で開発したシステムを利用することで、農業者は使用する農薬が農薬取締法や農協独自の農薬使用基準に照らして適正かどうかを簡単に判定することができます。具体的には、カメラ付き携帯電話で農薬容器のバーコードを読みとり農薬ナビ判定サーバに送信すると、今から使用しようとている農薬使用が適正かどうかの判定ができます。適用作物、本剤使用回数、有効成分回数、収穫日前日数等が判定項目となり、これらの条件を満たさない場合には、警告メッセージが表示されます。また、基準回数に達し、次回使用ができない場合には注意を促します。農薬使用に問題が無い場合には、判定内容をそのまま記録でき、農薬使用履歴の記帳作業が大幅に省力化できます。消費者を初めとする一般市民は、ホームページにアクセスして自分が購入した農産物が農薬使用基準に適合しているか否かを簡単に確認できます。これらの事業の成果に対する評価は高く、全国的な普及・実用化が期待されています。今後は、更に、肥料、飼料、動物用医薬品などの生産資材全般に適用できるように、新たなシステムを構築することが強く望まれています。
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新しいナビゲーションシステムは、生産資材全般の適正使用を支援するため、(1)適正使用基準と関連情報を収集・蓄積・共有・提供し、(2)こうした情報を活用し、使用計画と使用履歴に関する情報を収集・蓄積・共有し、適正でない使用を未然に防止するよう事前判定・警告を行い、(3)使用履歴を正確かつ省力的に記録し、履歴情報の信頼性を向上させる各種の機能を搭載します。
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私たちは、このシステムの運用を実現するため、広く利用者を募り、ナビゲーションシステムに関する調査・研究、開発・運用による情報処理サービスの提供、教育・研修、普及・啓発などの活動を事業として継続的に実施していきます。こうした事業により、生産資材の誤用防止や適正使用が推進されると共に、詳細で信頼性の高い農林水産物生産履歴情報の公開が可能になります。そして、一般市民の誰もが、農林水産物や加工食品の安全性および環境負荷に関する総合的で信頼できる情報を、迅速かつ簡単に入手できるようになります。私たちは、安全な農林水産物を安心して食し、安全な環境のもとで安心して暮らせる社会、換言すれば、安全で安心な食生活ができる健康的で豊かな社会の実現に寄与することを目的としています。
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過去3カ年に及ぶ任意団体としての活動の経験をふまえ、私たちは当団体の望ましい組織形態を検討してきました。私たちの主要メンバが属する研究機関や大学では、研究用のシステムを開発することはできますが、その成果を発展させて実用システムを開発し、それを継続的に運用することは制度的に困難です。また、私たちのシステムを稼働させるためには、生産資材の使用基準やバーコードなど多くの基盤的データが必要になりますが、これらのデータは官公庁や関連団体が生産資材の種類毎に保有しています。営利活動を行う企業が、これら生産資材全般の基盤データを収集・利用することは事実上、困難です。農林水産物や加工食品の安全性および環境負荷に関する情報を広く一般市民が簡単に入手できるようにすることは、公益の増進に寄与するにもかかわらず、既存の組織ではこれを行うことができません。こうした活動が行えるのは、農林水産科学技術と情報科学技術に関する専門的な知識と技術をもち、産官学民のどの機関・個人とも中立的な関係を保つことができる公益を目的とする非営利組織です。
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また、中立的・公益的な立場から産官学民の各機関・個人との多様な協力・連携関係を円滑に構築できること、産官学民の各機関・個人との種々の契約を支障なく行えると共に権利関係を明確にできること、法律に基づいた組織の内部構成や意思決定の仕組みを導入できることが、公益の増進に寄与する本団体の活動を継続し発展させるために必要であるとの結論に至りました。
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これらの条件を満たす法人格として、特定非営利活動法人を申請することに致しました。
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