3. GAPの実践[PDCAの実践]
3-1. 農場利用計画・点検項目の作成・見直し (Plan)
栽培計画等、農場を利用する計画を策定します。また、ガイドラインに示している実践を奨励すべき取組事項の内容が満たされるよう、各産地の状況に合わせ、点検項目の作成・見直しを行います。


(1)ガイドラインに即したチェックリスト

ガイドラインに則した取組を行う場合には、原則すべての取組事項に取り組むことを想定していますが、取り組まなくても良い合理的な理由がある場合には、必ずしも取り組む必要はありません。例えば、水耕栽培を行っている場合の土壌の管理などです。
ガイドラインの複数の取組事項を1項目にまとめて点検項目を作成することも可能です。工夫により点検に要する負担を軽減することができます。
■ ガイドラインに則したチェックリスト(点検項目)の作成、見直し・工夫
@対象作物の確認
対象となる作物によって取り組むべき点検項目が異なります。
A生産工程の確認
ほ場の準備から出荷まで対象となる作物の生産工程ごとに点検項目を決めます。
実際の生産工程と合致しているか現場での確認が重要です。
B危害要因等の確認
ガイドラインの取組事項を参考にしながら各生産工程の危害要因、汚染・異物混入の可能性、環境への影響などを確認します。
参加する生産者がGAPの意義を理解し、やらされ感を解消するためには、決められたチェックリストを押し付けるのではなく、生産者自らが危害要因等について確認し合うことが重要です。
C対策方法の検討
危害要因等を基に、その発生や汚染等を抑えるための具体的な対策方法を検討します。
生産者が取り組みやすい内容とするため、既に産地で作成されている栽培基準などを見直すことから始めるなど、工夫が必要です。地域の普及指導員や営農指導員など専門的知見を有する者の指導・助言が重要です。
Dチェックリストの作成
上記の検討内容を基にチェックリスト(点検項目)を作成します。
Eチェックリストの見直し
チェックリストの運用結果を基に、A〜Dの検討作業を行い見直します。


3-2. 実践・記録 (Do)
取組事項の内容について、研修会や回覧・掲示物などで作業者への周知・徹底を図り、GAPを実践します。点検項目を確認して、農作業を行い、取組内容の記録或いは伝票等の関係書類を保存します。


(1)記録簿・伝票などの帳票の作成・保存

GAPに取組む際には、以下に示す記録或いは伝票等の書類の作成と保存が重要です。(野菜の例)
■ ほ場の位置、面積等に係る記録の作成・保存
■ 農薬の使用に関する内容の記録・保存
■ 肥料の使用に関する内容の記録・保存
■ 種子・苗、たい肥、土壌改良資材、肥料、農薬等の購入伝票等の保存
■ 資材の殺菌消毒、保守管理の記録の保存
■ 野菜の出荷に関する記録の保存

ほ場に関する情報は、作付け計画には無くてはならないものです。また、農薬と肥料の使用記録は極めて重要で、環境保全のための点検にとっても最低限取組むべき事項です。
種子・苗、たい肥、土壌改良資材、肥料、農薬等の購入伝票等の保存や、かんがいの実施、資材の使用・洗浄・消毒、施設や機器の清掃等の記録も、農業生産活動の点検や確認を行う上で重要です。
このように取組みの内容を記録或いは伝票などを保存することで、生産活動に活用できるだけでなく、点検や監査あるいは外部からの説明の求めなどに対応することができます。

記録簿と伝票は自ら作成した物を使用する方法の他に、市販のノートや帳票、伝票を活用できます。パソコンなど情報機器の活用も有効です。記録のしやすさだけでなく、閲覧性や保存性を考慮する必要があります。筆記具も経年劣化の無いものを使用するようにします。
【参考】
上記、農研機構(生物系特定産業技術研究支援センター)作成システム(FARMS)の詳細は 以下のサイトを参照ください。
http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2008/14brain/brain08-05.html
その他、ほ場地図を活用した作業計画・管理支援システム(PMS)などがあります。
(近畿中国四国農業研究センター)http://www.aginfo.jp/PMS/


(2)記録の省力化(ITの活用)

記録作業の省力化はGAPの実践にとって重要です。日々の記録を効率的に行うことで、GAPの実践をスムーズに進めることができます。複数の作業者が関係する場合などはマニュアルを整備するなど記録作業のルール化を図ることも効果的です。
また、産地として多くの生産者がまとまって取り組む際には、ITシステムを使った記録が省力化に有効です。パソコンや携帯電話だけでなくOCR用紙を使う方法などがあります。システムを使うことで情報がデータ化され、記録内容の確認だけでなく、農薬使用が適正かどうかなどのチェックを自動で行うこともできます。
【参考】


3-3. 点検 (Check)
各生産者が行う自己点検と生産者以外の他者による客観的な点検の実施により、実践できた点検項目の確認を行います。実践できなかった点検項目については改善すべき点として確認・記録しておくことが大切です。


(1)ガイドラインの項目別「良い例・望ましい例」、「悪い例・望ましくない例」

一連の作業が終了したら、各生産者は作業記録等を基に、点検項目に沿って点検を行います。実践できなかった点検項目については改善すべき点として記録します。

野菜、米、麦の対象作物について、ガイドラインを構成する@食品安全を主な目的とする取組、A環境保全を主な目的とする取組、B労働安全を主な目的とする取組、C農業生産工程管理の全般に係る取組の各項目の「良い例・望ましい例」と「悪い例・望ましくない例」を提示します。



(2)客観的な点検の内容

内部点検、二者点検/監査、第三者点検/監査など作業を行った生産者以外の他者による客観的な点検の仕組みの活用が必要です。点検における客観性の確保と生産者の自己点検では見えにくい改善点の発見に有効です。わかりやすい証拠書類の整備など、他者による点検の受け入れ体制を整えることが重要です。
■ 点検/監査の内容
@観察: 事実を把握・抽出する
・事実を発見し、気づく。憶測や推測はしない
・事実の確認と承認の手順を踏む
・些細な不適合はその場で是正を促す
Aヒヤリング: 正確に聞き取る
・把握したい事項を正確に質問する
・生産者から直接聞き取る。又聞き、間接的な情報では不十分
・聞き取った内容を正確に記録する
B照合: 適切に確認する
・点検項目との照合
・現物と記録の照合
・ルールと作業・現状の照合


3-4. 見直し (Action)
点検の結果、実践できなかった点検項目については、農作業の見直しを行い、改善策を検討し、次の栽培に活用します。また、点検項目に従って作業したにもかかわらず、ガイドラインの取組事項が満たせないことのないよう、必要に応じて点検項目の見直しを行います。
農作業ならびに点検項目の内容を見直すために、GAPを実践するための改善計画と指導計画を作成します。


(1)改善計画

自己点検や内部点検の結果、農場内のルールが守られていないケースが発見された場合は、ルール、周知方法、作業手順、配置など、何を改善すれば良いかを検討します。
点検における照合作業の結果、自ら「合格」あるいは「適合」であることを確認することが重要です。自ら検証・確認できないものは外部に対して保証できないという前提に立つと、農場での自己点検が重要であることがわかります。
点検の結果、十分でない、あるいは実行できていないことが発見されたら、改善すべき事項を明記した記録を残します。例えば、内部における点検の結果は、次のような改善事項として活用できます。
■ 内部点検結果の改善事項の例
@点検作業の結果
・生産者に作業の実態や現状を認識させる証拠として活用します。
・生産者の客観的な姿を明確にする根拠として活用します。
A指摘事項/改善要求
・指摘は、点検作業の結果、確認された事実を知らせます。
・指摘には、評価を含みません。
・点検結果の指摘に基づき、改善を要求します。
B改善要求の合意
・点検者の指摘について、生産者と点検者の間で合意します。
・改善の方法は、生産者が現実的でかつ効果的か考察します。
・生産者から提示された改善の方法と期限について検討し、合意します。
C改善状況の確認
・合意した改善内容について、確認と効果の点検作業を行います。(次年度でもOK)
・指摘事項の改善状況についてのみ集中的に実施します。
■ 改善書の例


(2)指導計画

内部点検の結果、改善のための指導を行う場合があります。この場合、点検者から一方的に指示するのではなく、あくまで生産者の自主性に委ねることが重要です。改善の責任は生産者にありますので、点検者は改善方法を例示したり、生産者と一緒に検討するなどの作業を通して指導を行います。


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